俳句を作り始めて30年以上になる。しかし、一つとしてこりゃあいいのができた! なんて事はない。いいところまでやっても、続く言葉に出会わない。根気がへたっていつの間にか消えてしまう運命となる。「山路来て何やらゆかしすみれ草」 好きな句の一つだ。すみれ小さい。花はうす紫や濃紫がある。濃紫は清楚で三月の始め頃になると田んぼの畔や土手に指先に乗るくらいの小さな花を咲かせる。
すみれに限らず野の草花はどれも皆俳句に慕わしい。本格的な春が過ぎるころにはバラが咲き乱れる。バラは花の王者だが、なにやらゆかしの風情はない。ピエールドロンサーンは薔薇の中で一番好きである。花びらの先はわずかにピンクと紫が加わり、それはそれは美しい。 しかし、山路には咲かない。
小さなガラス瓶に一輪活けて窓辺に置く山すみれ、わが心を養い、一日中眺めて飽きないゆかしげな野の花よ。